「お客様第一」という言葉をどう扱うか

ヒアリング

言葉をなぞる前に考える

「お客様第一主義」を理念として掲げている企業は多いと思う

そのたびに、少しだけ考える。

この言葉に、
いまから自分が書く文章は、
どこまで近づけるだろうかと。

言葉は、置かれているだけでは動かない。
書き手がどう受け取り、どう扱うかで、
意味の重さは変わっていく。

きれいな言葉ほど、
そのままなぞるだけでは足りない。

少し距離をとって、
それでも離れすぎない場所を探す。

そのあいだに立つことが、
書き手の役割なのだと思う。

ちゃんと聞くことから始める

取材の現場で意識しているのは、
特別なことではない。

「正しく書くこと」よりも前に、
「ちゃんと聞くこと」。

質問を用意していても、
その通りに進むことはほとんどない。
むしろ、想定していなかった一言に、
その人らしさが宿ることが多い。

だから、流れよりも言葉を見る。

言い淀んだあとに続いた言葉や、
少し遠回りな説明の中にあるニュアンスを、
そのまま受け取る。

話を引き出すというより、
取りこぼさないようにする感覚に近い。

途中で言葉を遮らないこと。
わからないことは、そのままにしないこと。
理解したつもりで進めないこと。

どれも当たり前のことだけれど、
この当たり前を崩した瞬間に、
書けるものは変わってしまう。

書く前に手放していないかを確かめる

書き手として、
自分に問い続けていることがある。

書く前の段階で、もう手放してしまっていないか。

・話を聞ききる前に「こういう話だ」とまとめていないか
・言葉の温度よりも、結論のわかりやすさを優先していないか
・少し曖昧な部分を「整えるため」に削っていないか
・相手の言葉を、自分の書きやすい形に寄せていないか

どれも、小さな判断で、やりがちなこと。

でも、その小さな判断の積み重ねで、
書く前に失われるものがある。

「お客様第一」という言葉も、
書き手の都合で整えすぎた瞬間に、
少しだけ現実から離れてしまう。

だからこそ、書く前の段階で、
どこまで踏みとどまれるかが問われる。

言葉の温度を残す

書く作業は、整える作業でもある。

読みやすくするために、
言葉を選び、順序を整え、
余分なものを削っていく。

けれど、削ることと同じくらい、
残すことにも意識を向ける。

言い回しの癖や
少し遠回りな表現、
言い切らない余白。

効率だけで見れば、
消してしまったほうがいい部分かもしれない。

それでも、そこにしか残らない温度がある。

全部を残すことはできない。
でも、全部を整えすぎると、
誰の言葉でもなくなる。

どこを整えて、どこを残すか。
その選び方に、書き手の姿勢が出る。

言葉に追いつくために書く

「お客様第一」という言葉を、
そのまま書くことは簡単だ。

けれど、その言葉に見合う文章を書くことは、
簡単ではない。

だから特別なことをするのではなく、
小さな選択を重ねていく。

聞ききること。
決めつけないこと。
整えすぎないこと。
相手の言葉を、そのまま扱うこと。

そうやって書かれた文章だけが、
あとから言葉に近づいていく。

掲げられた言葉に近づこうとするのではなく、
書き手としての選択を積み重ねた先で、
結果として近づいていく。

その順番を、間違えないようにしたい。

灯すことばや|tomo
採用記事や社員インタビューを中心に、取材・ライティングをしています。
言葉になりにくい会社の魅力を、拾って整えることが仕事です。

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